昔むかし ~お伽噺のこころThe Spirit of the Folktale

日本の昔話(民話ともいう)は、古来より口伝えによって残されてきた伝承ファンタジーです。昔話は私たちを素朴で温かい、郷愁を覚える不思議な世界へ導いてくれます。
日本の昔話がいつ、誰によって作られたのかは分かっていませんが、農耕民族としての村落共同体を母体として、遠い昔より人から人へ、親から子へそして孫へと絶えることなく語り継がれ、日本全国津々浦々に広まり、各地に今も生き続けています。
昔話は「昔むかし…」という発端句で始まりますが、「昔、あったけど」、「昔、あったそうじゃ」、「とんと昔もあったげな」とその土地土地の方言で語られるとき、より輝きを増して聴き手を魅了します。

昔むかし ~お伽噺のこころ「花咲爺」より
昔話を語る象徴的な場所は、「囲炉裏端」でした。囲炉裏はかつて神迎えをする場所でもありました。昔の農家にはかならず囲炉裏があり、薪が燃え、自在鉤には大きな鍋や鉄瓶が吊るされていたものでした。夜になると家族が囲炉裏を囲みます。一家の主は横座、主婦は嬶座と呼ばれる席につきます。主は藁仕事に励み、孫はお婆さんの膝の上で昔話をせがみます。外にはしんしんと雪が降っています。
一つのお話が終わると、孫たちが次の話をせがむので、お婆さんはまた「昔、あったけど」と昔話を語り始めます。
口承文芸の昔話とは別に、古くから文字に書かれ、絵物語として親しまれてきたお話もありました。
「昔むかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。ある日お爺さんは山に柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。お婆さんが洗濯をしていると、川上から大きな桃がドンブラコッコ、ドンブラコッコと流れてきました。」これは日本人なら誰でもが知っている「桃太郎」の冒頭です。この外、本書にも収録した「一寸法師」、「浦島太郎」、「俵藤太」などは「お伽噺」と呼ばれ、文字や絵によって受け継がれてきたものです。代表的なお伽噺集としては、今から約六百年前にできたとされる「お伽草子」があります。

昔むかし ~お伽噺のこころ「牛若丸」より
本書には昔話、お伽噺、伝説、怪談、頓智話、神話と様々なジャンルから十六の物語を選びました。昔話の楽しさを知るきっかけとなり、加えて日本の伝統文化を理解する一助としていただければ幸いです。
収録されているお話リスト
- 鶴の恩返し
- 花咲爺
- 一休さん
- 因幡の素うさぎ
- 竹取物語
- 浦島太郎
- 笠地蔵
- 金太郎
- 耳なし芳一
- 分福茶釜
- 牛若丸
- 姨捨山
- 一寸法師
- 織姫と彦星
- 俵 藤太
- カムイチカプ
絵本情報
- 絵本タイトル
- 昔むかし ~お伽噺のこころ
- 発行年
- 2003年1月1日
- 絵と文
- 松田 けんじ
- 装丁・デザイン
- 松田 けんじ
- 編集・本文制作
- イデア絵本委員会
- サイズ
- H278×W220(mm)
- 言語
- 日本語、英語、中国語(簡体字)、スペイン語
- 発行
- 株式会社 イデア・インスティテュート
イラストレーター紹介


1940 年、北鎌倉に生まれ、戦争のため5歳のとき山形県・新庄市に疎開し、高校卒業までを過ごす。
子供のころの体験を 「原風景」 とし、絵を描いている。
著書に、「祭のこころ」、「揺籠のうた」、「一期一會」、「祭りだ『わっしょい!』」、「どんぐりと山猫」、「狼森と笊森、盗森」、「耳なし芳一」、「竹取物語」、「うらしま太郎」などがある。