祭りだ わっしょい!“Wasshoi!” It’s Festival Time! — The Spirit of Annual Events

祭りだ わっしょい!

私たち日本人は、古来自然を「神」として畏敬し、祈りを捧げてきました。太陽、大地、風、水、火、山川草木などにはすべて神が宿ると考えてきました。この自然崇拝は、日本が自然現象の影響を最も受けやすい、農業と漁業を中心に成り立ってきた社会であることと無縁ではありません。また、私たちは豊潤な四季の移り変わりから繊細な感性を授かり、自然を畏れ、感謝し共存することを学びました。

「盆」と「正月」がいっしょにきたような、という慣用句があります。うれしいことが重なったときなどの最大級の感情表現として使われますが、このことは取りも直さず私たちが「盆」と「正月」をいかに重要視してきたかの証左といえるでしょう。

祭りだ わっしょい!「正月」より

祭りだ わっしょい!「正月」より

盆や正月のように、地域共同体や家庭において、昔から毎年きまって同じ季節に繰り返し行われる伝統行事を「年中行事」と呼んでいます。

「節句(節供)」は中国から伝来した文化ですが、年中行事の大きな部分を占めています。節句の日は神を迎える特別な日のことで、「ハレの日」とも呼ばれています。これに対して、「ケの日」があります。ハレの日には晴れ着で酒を飲みご馳走を食べ、客人をもてなしたりして楽しみます。ケの日には普段着で、質素な食事をし、仕事に精を出します。このように日常的なケの日の節目節目にハレの日が交わり一年が過ぎてゆきます。そして新年には心身ともに新たにし、無事に一年を過ごせるように、人々は五穀豊穣、無病息災を願いつつ様々な神迎えの行事に勤しみます。

マツリ(祭り)という言葉には、「神を迎え、ご馳走を献ずる」という意味があります。日本人は「祭り」好きな民族です。祭りは縄文人の血を滾らせます。祭りは八百万の神々との祝祭です。

「祭りだ わっしょい!」より

祭りだ わっしょい!「出初め」より

すべてがコンピュータ化され、科学万能の時代にあっても、たった一日の祭り(ハレ)の日に神輿を担ぎ、一瞬の「宮入り」の感動を得るために365日を生きている、と胸を張る人々がいます。

祭りも時代とともに変貌を遂げています。本書では伝統的な祭りに加えて、「クリスマス」、「ラジオ体操」など、近代以降に定着した行事も収録しました。本書が日本文化を理解する上の一助になれば幸いです。

収録されているお話リスト

  1. 正月
  2. 出初め
  3. どんど焼き
  4. 節分
  5. 針供養
  6. 卒業式・入学式
  7. 端午の節句
  8. 田植え
  9. ラジオ体操
  10. 夏祭り
  11. お盆
  12. 縁日
  13. 稲刈り
  14. 体育の日
  15. クリスマス
  16. 餅搗き

絵本情報

絵本タイトル
祭りだ わっしょい!
発行年
2004年1月1日
絵と文
松田 けんじ
装丁・デザイン
松田 けんじ
編集・本文制作
イデア絵本委員会
サイズ
H278×W220(mm)
言語
日本語、英語、中国語(簡体字)、スペイン語
発行
株式会社 イデア・インスティテュート

イラストレーター紹介

松田けんじ 松田けんじ

1940 年、北鎌倉に生まれ、戦争のため5歳のとき山形県・新庄市に疎開し、高校卒業までを過ごす。
子供のころの体験を 「原風景」 とし、絵を描いている。

著書に、「祭のこころ」、「揺籠のうた」、「一期一會」、「祭りだ『わっしょい!』」、「どんぐりと山猫」、「狼森と笊森、盗森」、「耳なし芳一」、「竹取物語」、「うらしま太郎」などがある。

松田けんじ ホームページ

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